残像に口紅を

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

ほぼ読了。あと解説の一部を残すのみなので早々と記録。
実験小説であり、試みは面白いと思う。
音と共に音に関係した語が消えていく話なのだが、一番最初でルールの提示があるのが、個人的にはマイナス。
ここまで大胆な実験であるからこそ、最初にルールの提示があったのだろうことは想像がつくが。
たとえば、主人公自身が気づかぬ内に徐々に音が消えていって、発話に苦しむとか、物の名前が出てこなくなるとかになる*1話のほうが読みたい。主人公が推理していって、何らかのルールの下音や語やそれに伴う物質が消えていくことを解明するとSFっぽくないでしょうか。
まず、筒井先生のお気には召さないでしょうけれどもね。

*1:要するにこの小説内において巻き込まれた「その他大勢」を主人公にする